< 迂闊 >
ひとを憎むことは簡単だ。
その相手が生きていれば、それを継続することも労苦はない。
愛することよりも、もしかしなくとも長く保てる感情だろう。
この戦国において、憎む相手は事欠かない。
好むと好まざると戦乱に身を置けば、簡単に敵は増え、そして同じだけ危険が増す。
主君の仇、一族の恨み、国を滅ぼした憎しみ……
敵討ちというものは、たくさんの無念の命を背負うゆえに、最も単純な生きる糧となる。
彼女はまさにそうだった。
味方を失い拠り所を滅ぼされ、それを行った相手を倒すために、今の己は存在するのだと言い切る。
女らしいなにもかもを忘れたように、見た目も行動も一武将のそれと変わりなく。
陣に加わったはじめのうちは笑顔すら浮かべることはなかった。
すべての咎を一つの理由にして、盲目的なほどに一心に進む。
刀を磨き、己の武を高めて、いつかのその時を思い描いて。
また並々ならぬ実力があり、それが叶わぬ夢ではないことも、彼女の憎悪を長引かせる結果になった。
けれど運命は皮肉なことに、彼女に相手と同じ陣営に立つ道を用意していた。
太閤は陣営内の規律を厳しくし、決して間違いが起こらぬよう目を光らせる。
恩義ある相手に不義理はできず、表面上はおとなしくするしかなかった。
すぐ近くにその相手がいるというのは、目に見える分憎しみを保持しやすく。
しかし同時に味方として在る以上、ある程度近づく距離もまた避けられない。
憎まれ続けてやるほど人が好くもなかったので、
己はと言うといつもどおりに日々を過ごした。
毎日険のある表情で睨まれて喜ぶほど、特殊な趣味も持ちあわせてはいなかったから。
男は男なりに彼女を評価していたので、それを素直に表に出した。
月日がたち、徐々に揺れる姿を察知していても、放っておいた。
助力を請われたわけでもないのに、手を出せば噛みつかれるだけのこと。
まして原因である自分がそれをしても、よい結果はもたらさないだろう。
余計な温情をと、さらに感情を高ぶらせるだけの気がした。
必要以上に手をふれずに。
最低限だけ目に入れて。
少しだけ共に戦う。
そう思っていた。
そのつもりだった。
けれど気づけば腕を伸ばし。
必要以上に気を配り。
共同戦線に胸は湧き―――
だから、口が滑った。
「……では、儂がお嬢以外に討たれたら、どうする?」
問うてはならない質問をしたのは、
気まぐれだったのか、それとも。
> ものすごく微妙なところで終わります。
> 続きはいくつか考えましたが、なんだかどちらにしろ暗そうで。
> というか、両者ちょっと甘いですよねこれ(09.05.25)
> 実際討たれたら、ぎんちゃんはどうするんだろうなぁと思います。
> 対象はいつまでも存在してくれないと憎めません。
> ゲーム中では先に、ということはなかったですが、
> 実際の年齢的には大いにあり得るわけで……