< そして、 >


 後年。

 破れた家を再興すべく、中央で力をつけていた者に助力を請うて。
 その兵士たちとともに、九州の彼らの領地へと侵攻した。

 自分は一番最前線へと迷わず進んだ。
 危険だとかそんな言葉は一蹴した。
 そんな自分を、周囲はきっと誤解しただろう。
 敵討ちのためにたちむかう君主だと、思っているに違いない。

 けれど士気を上げるにはちょうどいいので、
 説明は省いてそのまま刀を手にし、馬を操り疾走した。
 物見の報告どおり、大将級だというのにあの男は、
 一般兵とともに一番苛烈な戦場にいるという。

 遠くからでもすぐにわかる、その気配。
 武器さばきは的確に雑兵をなぎ倒して、まったく無駄もない。
 老いたといっても、一般的な老人に比べれば、何十も若く見える。
 ……そう、すぐにわかるほど、面差しはそのままだった。

 胸をよぎる感傷をひとまずふりきって、斜面を利用して一気に距離を詰める。
 油断をついて兜を割ったが、反撃にあい馬から下りた。
 対峙して己の姿を見た男は、意外の声をあげた。

「女か……!?」

 半ば予想はついていた言葉だったが、それでも胸が痛んだ。

 わかっている。

 あれから十年以上がたち、こちらに面影などほとんど残っていない。
 ほんのひとときのことだったから、相手が覚えているかも疑わしい。
 たとえ記憶していたとしても、今のお互いの状況では、
 懐かしいと杯を傾けることもできはしない。

 だから、唇を引き結んで、彼女は高らかに言い放つ。


「女ではない、立花だ!」


 自分と男の間に存在する壁を体現するかのように、強く、深く。





 > 蛇足的に続けてみました。
 > そして色々あって裏へとつながります。
 > という流れで書いています、……一応。(09.05.12)
 > ぎんちゃんは間違いなくファザコン。
 > 迷子をたすけてくれて肩にのせてくれた相手に初恋。
 > その後は武道だなんだで恋愛っけなしで、
 > 再会して燃えあがる感情!……どこかの少女漫画みたいですが(笑